ぼくは眠っていた
オイタル

ぼくはずっと眠っていた
家並みの混んだ路地の奥
細い電線が空に絡まる保育園の
二階のしわくちゃな布団の上で まんまるに

ぼくの夢の上を白茶けた紙飛行機と
たくさんの紙の砲弾が行き来した
階段の下ではいくつかの悲鳴
窓の外に 幼い司令官の歓声

人を乗せないブランコがゆれて燃え上がり
支柱から外れたシーソーが水中に半ば身を沈める
窓から侵入した何人かの歩兵が
女の子の髪を引っ張ってる

ぼくはずっと眠っていた
小太りのタイチくんが高く鼻血を吹き出し
キョウコちゃんのお人形が肩口に傷を受けて
黒い水溜りに落ちたというのに

長く伸びた髪を垂らして
司令官は遠くを指差す
その指の果てに点滅する赤いシグナル
それとコンビニの汚れた看板

昼のおべんとの連絡が入る
いくつかの和解といくつかの裏切り
そして何人かが隊列を崩してホールへと駆け込む
何人かは扉の陰で身動きができない

ぼくはやっぱり眠っていた
電柱の先から昼の薄い陽がはずれ
遠くなった車のクラクションも少しずつ
還ってくるころに

色の褪めた昼下がりの保育園で
ぼくはまだ眠っていた
氷砂糖をなめ 明日
金色の自転車に乗る夢を見ながら


自由詩 ぼくは眠っていた Copyright オイタル 2010-02-20 18:13:41
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