正しき多面体
風恋誦

多面体の内側で 放るスーパーボール
ひどい事になるよ
角がふえて面がふえる毎に
ひどくなる

確信という言葉を持てる人は幸せで
今私何が正しいかわからなくて
多面体の小宇宙で迷子になっている
行き先なんて元々あったのかな

寸足らずで決して恥じない人は幸せで
今私考える人の姿勢をとって
左心房と右心房が互いに背を向けて
不完全な惑星より秩序を求めるの


時代とか性別とか国籍とか
脱ぎ捨てて風になる日
乱反射の原因は涙だった
愛着という惰性をひっぺがすようなね

ノスタルジジイも
ヘリクツニュータイプも
まとめて白く塗り替えてやる
ノイズはやがて珠旋律へ

多面体のある雨漏り番地
いまも補修工事のトンカチが
鋭く響いている
秘密の工場 秘密の向上

ブリキのようにひんやりして
空虚に思える夜があって
思い出の不知火だけが
溟い海で光のパレード
その中で知らない光をみつけた
それを明日と呼ぶのだろうか
てのひらで包むように捕獲すると
光はどこへ消えるだろうか

多面体の内側で 放るスーパーボール
ひどい事になるよ
角がふえて面がふえる毎に
ひどくなる
それでも万華鏡のように彩豊かな
風景をつくりだせるなら
もう一度愛してみようかな
マラソンの直後のような目が覚める清々しい疲れを


自由詩 正しき多面体 Copyright 風恋誦 2010-02-20 07:36:34
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