荒野はそこに今そこに
瀬崎 虎彦
めぐり合い別れ悲しみに時を費やし今はもう過去の鎖
水面をたゆたう別れの声に重ね合わせるものが深く沈む
鼓動はいつまでも反転の果てにあり水の苦さに懊悩する
誰一人たどり着かない孤独の底で今一人誰の名を呼んで泣く
荒野はそこに今そこに広がり心を言葉を失うばかりの地表で
地衣類のようにただ暗黙のうちにすべてをその懐に抱けば
鼓動はいつまでも反転の果てにあり水の苦さに懊悩する
眉をしかめ太陽をにらみ風の重さばかりを数値として記録する
人の世の喜びと人の世の悲しみを人が救うのであれば
偶然などに頼らないで今生きる道を僕は掴み取るだろう
人の世の喜びと人の世の悲しみを人が掬うのであれば
ただこの胸に巣食う息苦しさを使い古された言葉で表現し
人の世の喜びと人の世の悲しみを人が救うのであれば
詩は死とともにあり悲しみは手のひらに薄い結晶を成し消える