うひひ
真島正人


順序など何もないのだと
つぶやいた瞬間に重い書物が
飛んできた
角が尖っていて
すごく痛い
世界を何重にも描いても無駄だ
扉という扉の奥には新しい平面がある
息も絶え絶えという音で
進軍ラッパは常に鳴り響き
リョシュウリョシュウと
兵馬は進む
俺はすくみ上がる
電話がリンリンと鳴る
いくつもの
午後が
特別な光を伴って
映画のように反射する
脳は半ば
焼ききれたフィルム
想いだすことだけが
生きる糧として消化されていく
一時期を通り越すともうダメだ
同じことの反芻でしか
笑うことが出来ない
角ばった
故郷の形をした
部屋の隅で
両指を
目の端にもって行き
ゆっくりと撫でると
声が聞こえる
「肥えた土地に限って土は
大変な柔らかさと独特の色合いを持つ
指を土に差し込んで数秒間息を止めた後
ゆっくりと息を吸い込んでみたまえ
君に何か想う所があるならば
それは爪となり君の内部に傷を残し
そしてそれは消えることが
ないだろうエイメン」


自由詩 うひひ Copyright 真島正人 2010-02-20 03:11:28
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