冬と水
木立 悟
夜の雨の手
蒼とおる蒼
迷霊の足跡
川へつづく
背から土へ
脈動は抜け
眠りはひとつ
ひとつだけ来る
避けた風に指を入れ
音の温さを乱している
不連続のはざま
ひとりをひとりに投げつけるもの
とどまらぬ人の
負を振り返る
羽の上の羽が
凍り砕ける
泣いたまま生きて
陽は冷たい
冬はこぼれる
冬は昇る
葉のかたちの氷が溶け
生まれたうたは手のひらに当たり
互いの笑みを突つきながら
指のあいだをすり抜けてゆく
悲しげなものがまとわりつき
ともに道を曲がる
小さな熱を残し
片羽は飛び去る
滴は滴の標を見る
応えることのない蒼を見る
静止した泡の左に咲く花
逆さの虹の冠を見る