冬のさくら
月乃助


季節の変わり目は
不思議と あいまいで、
みあきた建物たちの 
街色は、いつもの 
寡黙のまま

昨日とのくべつのない 
今日を数えながらも、
オリオンをあとにしたら
きみを探しにいくよ 

靴を履いたら、鍵を手にして
飛び出した願いは
もうはてない 
銀河の街をめぐる 想いの渇望

寄り添えば
きみの堅い髪が、ゆらめいたりするものだから
花にふれるように
あたしは、手をのばしたくなる

香りがほんの少しばかりする
冬を ここでなら忘れられそう
おしゃべりな寒桜が、淡い色にそまり満開で
まるで春のあでやかさです

花びらが、海風にさそわれて

ここまでやってくる

カモメたちさえも、体を寄せ合い

どうしたって、男の方が赤い口紅なのですね

簡単にわすれられる
海原を一人ゆくように
からっぽになって
桜の花をそこにみたして、こぼれおちるほどに
香りにさそわれたなら 

それで、良いのですね

愛しさをいつから持ち始めたのか
それさえ覚えていないのです
ずっと、胸にしまったままでもよかったのに
きみの部屋の鍵をにぎりしめながら
使うことができずに、 
冷たい海の 
水の中を歩きたく
なりました

子ども達のことも忘れて今は、
ただ 砂浜の砂の数をかぞえるように
途方もなくなって、
しまっているのです






自由詩 冬のさくら Copyright 月乃助 2010-02-19 06:18:30
notebook Home