私たちの、絶え間ない変化
真島正人


夜に
もう成長しないどころか
ますます退化をする体を抱えて
たくさんの書物と一緒に
帰宅をすると道すがらの
運動場には
テニスの練習をする
少女の姿があった
テニスウェアではなく
ただの体操着で
うまいもんだな
壁に打ち付けた球が見事彼女に返ってくる
汗の雫は見えない
暗いためなのか汗一つかかない体なのか
そんな光景は
僕にある人の映画の場面を
思い出させる
いわゆる一つの
芸術映画だ
芸術は
何処までも芸術であって
それは人の心に作用をして
人を成長させるはずなのだが
あの映画をたくさん見た僕は
見る前よりも息苦しくて
どうすればいいのかわからなくなるばかり
僕だけではなく
たくさんの鑑賞者が同じ想いだろう
そうでなきゃ1960年代からこっち
世の中は素晴らしい芸術で溢れてなくちゃならない
なのに僕ときたら
深夜のゲームセンターで
久しぶりに一等を取ったシューティングゲームのネーム入力で
冷笑とともに『JLG』と打ち込んだり
アダルトゲームに喘ぎながら
声優の可愛い声だけは消してモーツアルトの協奏曲を
かけることぐらいが精一杯なのだ
僕は怖くなる
自分の記憶のどこかが
黒々と良い土になっていて
素晴らしい農作物が生い茂っている様を想像して
土の肥やしは僕のさまざまな感情だ
感傷性、叙情性、優しさと悲しさそれら全てが
土になり、肥料になり
ただ何者かわからない草花を育てることだけに従事している


自由詩 私たちの、絶え間ない変化 Copyright 真島正人 2010-02-19 02:42:08
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