いついつの日
15フィールズ
闇のなかに消えた淡いブルーを思い出しながら家路につく
時計の針が最後に触れた数字を覚えてはいない
もちろんぼくが最後に触れた数字も覚えてなんかいない
川をまたぐ橋(バカみたいな表現だ)を渡るときに当然のように孤独に思い当たった
風を受けて声にならなかった悲鳴が橋から聞こえる
錆び付いた鉄の匂いがしなかった
ぼくはこどくだ
優しく風が吹く
橋を渡りきると漆黒の輪郭を際立たせる薄暗い照明
明滅の手掛かりを失ったのかひっそりと点在する橙
ぽつりぽつりと行き交う顔のない人
見えないのは当たり前だ
ぼくは忘れるように歩いた
足元で何の数字がうごめいているのだろうか
と
とりとめのないことを考える
いずれにせよその数字はぼくを破裂させるにはたやすいだろう
それにしても最後に触れた数字が思い出せない
思い出さないのか
そんな薄暗い照明の下を過ぎると
あとは家まで明かりのない一本道
ここに俯瞰する視点を置ければぼくは闇にのまれるのに
ぼくはぼくだからそうはいかない
明日はうまくいくだろうか
そんな繰り返しの日々
まるで自らエッジを広げようと寄せる波のように
そして奇妙な場所に追いやられやれやれ
ぼくはぼくだからこどくだ
知ってる
なんて笑えるんだろう
知ってるなんて何処で知るんだ
ぼくは暗闇へと一歩踏み出す
闇に飲まれたぼくの姿を見る人なんか誰もいない
淡いブルーが闇に消えた瞬間を知る人がいないようにそれは元からそんなところにはないのだから
と知ったかぶる
腕時計の針はそのとき丁度11を指した
帰ろう
世界がどうあるべきかまたはどうなろうが
ぼくは帰るんだ
それだけは間違っちゃいけない
「ただいま」