タイムカプセル
窓枠

 十年? いいや

もう少しだけさかのぼって
私があたしだった頃に埋めたもの


放課後の校庭の隅
老いぼれ花壇のど真ん中
誰にも相手をされなければ
景色の一環とも見られない

忘れ去られた場所にこそ
約束と思い出を残してやりたかった

時が過ぎても変わらなかったのは
私との約束をかたく黙して
ずいぶんと長生きしてくれてたのだろうね


老人を労わるような手つきで
ゆっくり掘り起こして
置き去った黒歴史をすくいあげるよう
かつておばあちゃんのせんべい缶だった
愛しいスチールの冷たさに熱を宿した

ひとたび蓋をあけてしまえば
あたしの顔でほくそ笑む
久しぶりと言わんばかりに対面した
リカちゃん人形は片腕をあげていて
流行遅れな洋服にどこか安心を得た


価値もつけられないビー玉という宝石
生涯を笑いつくした笑い袋
私ではもてあましてしまうような玩具が
ずらり

最後に奥底で眠っていた手紙
お母さんへ宛てられたあたしの手紙
私が読んではいけないよね
と、右ポケットにそっと忍ばせて

左ポケットから取り出す
十年後の私への手紙
と、この詩を詰め込んで
もういちど埋めてあげた

(また十年後)

次は子供も連れて来るからと
永い約束を交わして
お母さんの下へと駆け出す私(と、あたし)


タイムカプセル?
それはね
 未来へ送る宝箱なのだと思うんだ


自由詩 タイムカプセル Copyright 窓枠 2010-02-18 01:14:22
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