じゃんけん
小川 葉

 
 
夜更け
冷たくなった台所で
誰かがじゃんけんしてる

声は聞こえないけれど
それは
たしかに聞こえている

誰もいない台所で
聞いている
じゃんけんに
勝ったものは声をあげ
負けたものには声がない

低い音がして
冷蔵庫が目を覚ます
命が
うしなった声をあげるように

やがて私は理解する
人に生まれた私と
冷蔵庫に生まれたあなたがいることを

じゃんけんしていたのは
私たちだったことを

冷蔵庫を開けると
さっきよりもたくさんの
じゃんけんしてる
声が聞こえる
 
 


自由詩 じゃんけん Copyright 小川 葉 2010-02-17 01:20:44
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