手紙
たもつ
深夜の冷たい台所で
古くなった冷蔵庫が自分で自分を解体していた
もう冷蔵庫であることに
いたたまれなくなったのだ
時々痛そうにはずしたりしながら
それでも手際よく仕事を進めていった
徐々にその面影をなくし
最後にコンセントを抜くと
すべての作業は終わった
翌朝床の上には中に入っていた食品と
ばらばらになった部品が
丁寧に並べられていた
何に必要だったのか
初めて見るような部品もたくさんあって
めずらしかった
別れの手紙を探してみたけれど
冷蔵庫に文字が書けるわけもないし
自分だって
感謝の言葉ひとつかけたことなどなかった
日持ちの悪そうな食べ物は捨てて
他のものはとりあえず涼しい所に置くことにした
郊外の家電量販店に行って新しい型のものを注文した
ばらばらになった冷蔵庫を引き取れるかは状態を見て
と言われた
家に帰り名前のわからない金属製の小さな部品を
日あたりの良い庭の隅に埋めた
しばらくして埋めた所から若い色の芽が出てきた
偶然だと思うけれど
花の咲く植物かもしれない