手紙
たもつ

 
 
深夜の冷たい台所で
古くなった冷蔵庫が自分で自分を解体していた
もう冷蔵庫であることに
いたたまれなくなったのだ
時々痛そうにはずしたりしながら
それでも手際よく仕事を進めていった
徐々にその面影をなくし
最後にコンセントを抜くと
すべての作業は終わった

翌朝床の上には中に入っていた食品と
ばらばらになった部品が
丁寧に並べられていた
何に必要だったのか
初めて見るような部品もたくさんあって
めずらしかった
別れの手紙を探してみたけれど
冷蔵庫に文字が書けるわけもないし
自分だって
感謝の言葉ひとつかけたことなどなかった

日持ちの悪そうな食べ物は捨てて
他のものはとりあえず涼しい所に置くことにした
郊外の家電量販店に行って新しい型のものを注文した
ばらばらになった冷蔵庫を引き取れるかは状態を見て
と言われた
家に帰り名前のわからない金属製の小さな部品を
日あたりの良い庭の隅に埋めた
しばらくして埋めた所から若い色の芽が出てきた
偶然だと思うけれど
花の咲く植物かもしれない
 
 


自由詩 手紙 Copyright たもつ 2010-02-16 20:54:53縦
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