マイセルフを探して
中原 那由多
ただ、呼吸だけをしていれば
それが唯一の救いになっていたのだろうか
砂漠に捨てられた緋色を
ドライフラワーと呼ぶことはつまらないおふざけ
ひび割れた部分を優しく撫でてみて
前頭葉で水の滴る音がしたのは
暗黙の了解に囚われているからなのか
白線の上を慎重に歩いていた頃は
その先がどこに続いているのかなんて知る必要はなかった
白線が消えそうになっている今となっては
終着点までちゃんと理解できているはずだけど
今度は進む勇気の意味を知らなくてはならなくなっていた
迷走していることをいつしか忘れている
拾った雑誌の広告のほとんどに誤植があり
捨てられるべくしてここにあったのかと
悟った頃には既に雨は止んでいて
それでも傘をさしたまま屑籠を求めて歩いていた
つい掻きむしった首筋に
いたわるように添えた冷たい手
陽当たりの良すぎる部屋からは
詩集のページをめくる音がかすかに聞こえている
曖昧な答えの中ではまだ海洋深層水が循環していて
水風船のようにはじけたなら
身体と溶け合うことができるのに
水風船のようにはじけることに
時が止まることよりも怯えている