アンドロイド
月乃助

悲しくても
涙は流さない
ショートしてしまうのです   
すべてのプログラムがイン・プットされているなら
それでよいはず
機能を十分に果たせるように
あたしがいる、冷たい手をしたその指先に
ファイバーグラスの髪

人の温かさにふれるよう
銀河の小さな星からの 長い手紙をよみながら
小さくため息をついていた
少しばかりの自由を得て 
今はゆっくりと休むこともできる

回路は正確にいつものパルスを送り続け
擬似眼球のレンズが見るのは、安らぎの人の笑い
腰の回転音が少しばかり気になっても
ヒールの高さが気になることはないのです
重い足取りをくりかえしながら
どこへ向かっていくのですか、

命令にただ従うために生まれた
そうしながら 生きていけばよいだけ
何も考えずに、そう、思考することも必要ない
安穏とした未来を予想することも、
みだらな過去を悔悟する すべもしらず
単調な旋律の音声を出しては応答する
喜びも悲しみも 理解せずに
ほほえんでいる

本当に心を持たないのですか、
人の姿をしていながら、多くの人間たちは心をうしなっているのです
それならば、あたしに心がなくてもおかしくはない
それをもとめるなら、授かることだってできる

機械などと呼ばさない
そうであっても いつか
きっと夢だって見られる だろう
人工水晶レンズに投影される
それを人は、夢 物語と呼ぶにきまっているのに




「Unplugマデ、アト5秒、
 充電ガ完了シマス」







自由詩 アンドロイド Copyright 月乃助 2010-02-16 06:50:34
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