月の待ちびと
吉岡ペペロ
そとは雨降り
東京での一日目の仕事が終わった
家賃の高そうな高層ビルの一階で
友人の迎えをぽつねんと待っている
6時にもなっていないのに
新大阪駅は会社員でごったがえしていた
ひとごみの匂いはなかった
まだだれも
日中の塵芥をまとっていなかった
朝まだきの新幹線は
なんだか静かな夕方を走るようだった
月にはたしか
静かの海というポイントがあったように思う
塵芥をまとった人間のいない
匂いの
いない月にも
やがて人は働きにゆくのだろうか
それを月は
待ってくれているのだろうか
そとは雨降り
東京での一日目の仕事が終わった
家賃の高そうな高層ビルの一階で
友人の迎えをぽつねんと待っている