昌平橋ーちょっとした逢い引きー
……とある蛙

内から歩いた昌平橋は
橋の欄干鉄骨造
頑固に昭和を語っているが
通る者皆急ぎ足

君に会いたい訳でなく
季節外れの花粉症
マスクの中から見る川面
鯉が悠々縄張り確認

外から歩いた昌平橋は
電車のガードに邪魔されて
一寸先がよく見えず
通る者皆勇み足

潰れたホテルで約束の
食事をしたのは五年前
通りの向こうの中華屋に
出前を頼む人もいた。

川があるから橋なのだが
神田の皮にある橋で
内と外とを分ける川
神田川とはよく言った。

だからこれから渡る者
神田が痛くないように
皆そっと歩いて渡る
それがどちらがどちらでも
行く先 それは神田と神田



自由詩 昌平橋ーちょっとした逢い引きー Copyright ……とある蛙 2010-02-14 17:31:17
notebook Home