ぼたん
たちばなまこと

銀のトレイン
夜を切り開いてゆく
その中で
静かな
穏やかな
フィルムをめくると
繊細な彫刻が並ぶ草の原
その中に
招き入れられる

きみは愛されている
きみは感じるままに
いけばいいよ

言葉はぼたん雪
あたたかく降りつもる
音も立てずしとやかに
大人の恋のように

私には見えていない
私は何も決められない
そのふたごの水晶玉たちに
何が映っているの

私のうつわが飽和状態になったら
少しずつしっぽを切り離して
言葉を落としてゆく
あなたたちは拾い集めて
封筒に入れる

マジック
封筒に火を点けて
現れたのはぼたんの花
今日に選んだコサージュのように
大きくひらいた中間色の

フォーマルな装いで
ひとつの方向を示すあなたたち
私はぼたんの花を左胸に飾る

濡れたホーム
雪の雨に吐く息は
水の粒子にまざり
やがて雲になる


自由詩 ぼたん Copyright たちばなまこと 2010-02-13 09:40:44
notebook Home 戻る