行間
たもつ

 
 
世界中の積木が音もなく崩れ始めた頃
特急列車の白い筐体が最後の醗酵を終えた頃
口笛を吹いていた唇がふと偽物の嘘を呟いた頃
少年から剥がれ落ちた鱗は一匹のアキアカネとなって
ハーモニカ色の空へと飛び立って行った

騒がしい沈黙がある
深く澄んだ騒乱がある
ぼくはある晴れた誕生日の夕方、きみに出しそびれた手紙に残っていた
ありったけの行間を燃やしたのだった

どこかで誰かが銃弾を栞の代わりにして聖書にはさんでいる
シーソー遊びに飽きた若い男女が一枚の様式をベンチに忘れたまま
子供を生みに向日葵畑の向こうへと消えていく

すべての隙間のあちら側には風景があるのだ、と
信じて疑わなかったぼくはすべての隙間を覗き込んでいるうちに
トノサマバッタが引っ張るリヤカーに乗り遅れてしまった
観覧車を掃除していた兄が慰めようとして
鳴かない鳥の鳴き真似をずっとしていてくれた
その声を聞きながらぼくは眠り
深夜になっても眠ったまま朝まで眠った
 
 


自由詩 行間 Copyright たもつ 2010-02-12 23:14:10
notebook Home 戻る