穴違い
服部 剛

最近どうも
君の胸に鍵をさすことができない

手にした鍵を
むりに入れてもしっくりせずに
疑心暗鬼な手つきで
がちゃがちゃと
右や左にひねっては
君の表情を曇らせてばかり

だいたいの人には
心の法則のようなものがあり

右に ぐいっ と回したら 瞳には太陽
左に ぐいっ と回したら 両の目から雨降り

のはずが
君の鍵穴ときたら
右に回したつもりが
なぜか左に回っていたりして
そんな時に窓の外を見ると
雲ひとつない空から
天気雨が ざー と降ってきたり
曇り空にうっすら虹が架かっていたり ・・・

ソファーに座り
天気予報を見ながら
明日の空模様を気にしている君の横顔に
声無き声で 告げてみる

「予報は 思うほど 当てにはならない」

机に置かれたテレビのリモコン
電源ボタンをむしょうに押したくなってくる

明かりの消えたキッチンで ぼう と立ち
手にした鍵の
にぶったかがやきを見つめた後に
自分の胸の鍵穴にさしてみると
ぴったり はまった

「ぐいっ」




















自由詩 穴違い Copyright 服部 剛 2004-09-27 14:00:30
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