マンホールアパートメント
チャオ

マンホールには傷がついていて、
ずっと昔から誰にも見えない程度に、
血が流れていた。

工場の排水が、
今日もマンホールの下を通り抜けると
さび付いたマンホールの血は滴り落ちていく

マンホールアパートメントが出来たのは
失業率が30パーセントを超えたときの話で、
いずれにせよ、それなりの歴史はありそうだ

ただ、足早に過ぎていく車の足音だけには、
マンホールの暗く、じめじめした世界は不必要で
早くなくなればいいと願われたりもしている

地上に建てられた
高層マンションは
不景気続きで取り壊されるらしい

マンホールにつけられた傷は
相変わらず、
わずかな血を流している。


自由詩 マンホールアパートメント Copyright チャオ 2004-09-27 13:35:41
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