黄味の心
麻生ゆり

炭酸水の海の中
身体全体から気泡が発生する
それはまるで
私が溶けていくかのようだ
お酢に入れた卵の殻が
いつの間にか無くなってしまうように
私の身体も人魚姫の最期のごとく
あとくされなく泡となり消えてしまって
黄味の心だけが炭酸水に残る
だけど私はそれでかまわない
残った私の心はどんな色をしているかしら?
炭酸水に浮かぶかしら沈むかしら?
温かい? それとも冷たい?
形は? 色は?
私がこれだけ心にこだわるのは
己の美しさ
  汚さ
  強さ
  弱さ
  しなやかさ
  儚さ
その他諸々の感情を
分析してみたいの
だって事実それらは
レコードの表と裏のように
一体と化しているから
決して混じらない水と油
敵対する犬と猿
統一できない悲劇と喜劇
これらと違って
私たちの心の暗闇も心の空白も
実は区別できない同じもの
心とは
黒でも白でもない
混ざりあった
灰色のようなものだと私は信じている
問題はそのパーセンテージなのよ、
ご存じかしら?
黒い悪魔が誘惑するのに耳を傾けてしまうか
白い天使の微笑に最高の笑顔で応えるか
そんなの誰にも…わからない
炭酸水の海で
いつ私の心が現れるか楽しみだけど
そのころ私は瞳すら残さず
きっと融解して
跡形もないでしょう
そんなときはねぇあなた
私の代わりに心を炭酸水から引き上げて
あなたの部屋に連れて行ってちょうだい
そして
そのままの心を精一杯愛してください
私は私
決して変わることはないから


自由詩 黄味の心 Copyright 麻生ゆり 2010-02-12 00:14:13
notebook Home