根の国の慈雨の子守唄
小池房枝

うそか
ほんとか
ネズミは「根住み」なんだそうですよ

根の国
地中深く
その鳴く声もチュウ、チュウと
黄泉の国の住人

うそかほんとうか
どちらといえるようなことではないけど
ただありそうで
いかにも

思いめぐらせれば
ネコも根子だったのだろうか
お経を守って
はるばる渡海してきた仏法のしもべ

馬の世話がかりを馬子とよぶなら
根ずみがかりが根子にでもなったか

猫はいつも寝ているから寝子
とも聞いたけど
寝る
ということそのものが
「根」することだったのかもしれない

ねること
根むること

ひととき
だれもみな毎日
根の国をおとなうこと

たいていの木の根が
地上の高さよりもはるかに深く
大きく
広く
根の国に根ざしているように

根の国と此方と
行ったり来たりするなかでこそ
洗われたり
顕われたりするものも
きっと多かったはず

だから
チュウチュウねずみ
いまどきならばハムスターたち

それからじゃらじゃら
神社の鈴のようなケータイストラップたち
一昔前までの根付

すみやかに
無理なくねむりを運んでください
ひとびとに
毎日をせっせと
くりかえしに倦むことを生むことなく


自由詩 根の国の慈雨の子守唄 Copyright 小池房枝 2010-02-11 21:57:54縦
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