「すいません、住むところをさがしてるんですが」
と言って、仮面ライダーがお店にやってきた。

はいはい、いらっしゃいませ。どのような物件をお探しで？
ふんふん、バイクが停められて安めの物件。
バイクがお好きなんですか？
あ、仕事でお使いになる。
なるほど、どのようなお仕事なんですか？
え？　正義の味方？
そりゃあ、大変なお仕事ですねえ。
それで、どちらの団体に所属されておいでで？
え？　正義は孤独？　というと個人営業？
そうですか・・・それで御年収は？
え？　正義の味方は無収入？　バイトで食ってる？
いや、フリーターの方はちょっと・・・。
どこかに就職された事はないんですか？
え？　以前はショッカーにいた？
ほうほう、秘密法人ショッカーさんですか。大手さんじゃないですか！
あそこの人だったら、すぐにでもお貸しできるんですが。
そもそも、ショッカーさんは借りあげ社宅制度がありますよね。
再就職はされないんですか？
え？　だめ？　正義に生きる？　そうですかあ・・・
そうだ、親御さんに保証人になっていただければ・・・
え？　天涯孤独？
う〜ん、だれか保証人になってくれそうな人はいないんですか？
ちゃんとした収入がある人だったら、親族の方でなくてもいいですから。
おやっさん？　お知り合いの方ですか？
なるほど、今、居候させてもらっている人ですか。
喫茶店経営？　ああ、三丁目の停留所から入ったところにある。
あの・・・めだたない、つぶれそうな・・・。
いやあの、やはりちゃんと就職されてからの方がよろしいのではないですか？　ねえ。
え？　実は就職活動もしてみた？
でも、住むところがちゃんとしてないと、断られてしまう。
なるほどですね。しかし、ちゃんと就職している人じゃないと、お部屋を紹介できないんですよ。
いろいろと審査基準とかなんとか、まあ、ありましてね。
いや、もちろんお客さんが真面目な人で、ちゃんとバイトをして家賃を払ってくれるだろうってのはわかるんですよ。
なにしろ正義の味方でいらっしゃるんですから。
でもね、やっぱりあれですよ。
そういうもんじゃないんですよ。ははは。
いやいやいや、変身なんかしてみせなくてもいいですから！
疑っている訳じゃないんですから！

「・・・・・・・・・」

・・・え？

「じゃあ！　なんで！　俺に部屋を貸してくれないんだあっ！！」

タイヘンモウシワケゴザイマセン

変身した仮面ライダーは、泣きながらバイクにまたがって夕陽の中へと去っていった。
彼が真面目で約束を守る人間だという事は、誰だってわかっている。
それでも仮面ライダーは部屋を借りることはできないのだ。
できないのだぁ！