骨まで愛して
楽恵



あなたの頭蓋骨を、かき抱く
この胸に熱く
柔らかな髪に包まれた後頭骨に
私の上腕骨を回して
冷たい額の向こうの前頭骨に、頬骨を寄せる
あなたが考えていることが、私の心に伝わってくる
世界を支えているこの骨の逞しさ


耳元であなたが私の名を呼ぶ
あなたの声が、私の耳小骨を震わせる


私の涙が、あなたの涙骨のうえを流れる
鼻骨と鼻骨を
犬のようにすりあわせる


上顎骨と下顎骨を無理やりこじ開けて
痛いぐらい舌を伸ばして舌骨を探す
悲鳴を封じられたその骨のせつなさ


脊椎骨に並ぶ骨をひとつひとつをなぞる
頸椎から、腰椎、仙椎、尾椎まで
強い意志をまっすぐに秘めた神秘を確かめる


胸板から遠慮なく胸骨をまさぐる
あなたの心臓と私を隔てている骨
鼓動の溶け合いを最後まで拒否してる
腹いせに鎖骨と肋骨を責めるように舐める


組み敷いた肩甲骨が軋むのを合図に
待ちきれず骨盤と大腿骨同士を絡ませる
触れ合う恥骨と恥骨
反り返った首のあなたの喉仏が好き


服は着たままでいい
服もプライドも自我も、着たままでいい
あなたの骨だけ知りたい
あなたの骨だけ知りたいの




自由詩 骨まで愛して Copyright 楽恵 2010-02-11 19:40:55
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