【 逃げ回るネズミ 】
豊嶋祐匠

 
 
 
 
 小学生の頃
 
 うちのネズミ捕りにかかった
 
 一匹の親ネズミを
 
 
 母親は
 
 バケツに水をためて
 
 ネズミ捕りごと沈めた
 
 
 
 
 逃げ場の無い
 
 水面を求めて
 
 ネズミはぐるぐると回る
 
 
 
 
 俺は
 
 そのネズミと
 
 勝負をするように息を止め
 
 
 ネズミが
 
 楽になる頃
 
 
 俺も
 
 申し訳なさそうに
 
 大きく深呼吸をした
 
 
 
 
 初めて
 
 死のふちを
 
 覗き込んだ気がした
 
 
 
 
 その時の
 
 わくわくした自分を
 
 忘れられないまま
 
 
 俺は
 
 残った子ネズミを
 
 今も記憶に捜している
 
 
 
 
 以来
 
 ネズミが
 
 家から消えてしまったのは
 
 
 あの
 
 子ネズミが
 
 今も
 
 
 俺から
 
 逃げ回っているからだろうか。
 
 
 
 


自由詩 【 逃げ回るネズミ 】 Copyright 豊嶋祐匠 2010-02-11 17:52:57
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