やっぱりさみしさだとしても
あぐり
さみしいとばかり垂れ流しているくちびるが
あなたの名前をさがしているんです
ぼくはずっと
世界のおわりをみるために三角ずわりを崩さず、
双眼鏡片手に珈琲を飲んでいたけど
七年間そばにいたぼくの親友とは静かにさよならをしてしまった
お互いに
お互いの存在を名付けられずに
名前がないままでもいられなかったぼくたちはやっぱり子どもで
ほんの少し大人になった瞬間に
さみしさが反発したんだろう
(特に好きでもないテクノを流しっぱなしでいるのは
多分また浸りたいから)
さみしいとばかり垂れ流しているまぶたが
あなたの名前をさがしているんです
あなたが触れると
ぼくのひたいはやらかくあたたかくなる
さみしいと、
その隙間に、
詰めていく、
そんな、
そういう、
そんなものではないのに。
あなたの感情をもとめている
あなたのしあわせをもとめている
あなたがなんの代用でもないように
あなたがたったひとりのあなたであるように
ぼくのさみしさを埋めていくのはあなただけども
あなたのさみしさを産み出しているのは
紛れもないぼくだというそんな事象を嘆くほどには
もうぼくは子どもじゃなくて
せかいはまだずっとまわっていて
ぼくは少しそれを愛してしまうよ
明日もさみしさにうたれたとしても
あなたの名前をぼくがさがしたとしても
それはきっと
あなたをかなしくさせるそんなものじゃないから
出来る限りの瞬間を重ねてぼくにあなたの名前を与えてほしい
ひとりきりで毛布にくるまりながら呼ぶよ
ささやかなぼくのせかいにあなたがひとりいてほしい
そんな感情につける名前は
やっぱりさみしさだとしても
ささやかなぼくのせかいに
あなたがただひとりいてほしい