スフィア フェティッシュ
ハイドパーク
白磁の球体のただひとつの穴に
青磁の円錐の先端を突っ込んで
女性に見立てた
右手の親指と小指で円錐をはさみ
残りの指の腹で球体を愛撫した
触れるか触れないかの所で
一本ずつ円を描きながら
艶やかな絹の肌をまさぐった
十分にじらした後で人差し指を立て
スゥーと下りていった
胸のあたりで停滞した後
一気にスカートのすそと
極限まで研磨され鏡面となった
鋼鉄の台座との際まで進み
静かに爪を立てて彼女を横にした
底面にもしっかりうわぐすりが塗られ
中心には指2本入る穴が開いていた
メゾピアノ 円周部
2番3番の指で優しく
フォルテ 最深部
こすりつけながら激しく
鼻を鳴らす子犬の声で
微振動をはじめたのは
私の指紋のせいだろうか
鼻腔に浸潤する沈丁花の香
漂いはじめたのは彼女が
花瓶だったせいだろうか
台座はLED光に照らされて
二人の行為を月のように青く
映しだしていた
なんというなめらかさ
奥の奥まで変わることない
高まる心を抑えきれずに
蛇のように球体にキスをした
ああ どうしよう
すっぽりと抜け落ちたそれは
無摩擦の平面をツゥーと滑って行き
最果てのところで落下して
割れた
その時天井から吊らされていた
無数の金属の薄い板が
互いに重なり合って
ひとつらなりの音の波になった