スフィア フェティッシュ
ハイドパーク

白磁の球体のただひとつの穴に

青磁の円錐の先端を突っ込んで

女性に見立てた

右手の親指と小指で円錐をはさみ

残りの指の腹で球体を愛撫した


触れるか触れないかの所で

一本ずつ円を描きながら

艶やかな絹の肌をまさぐった

十分にじらした後で人差し指を立て

スゥーと下りていった


胸のあたりで停滞した後

一気にスカートのすそと

極限まで研磨され鏡面となった

鋼鉄の台座との際まで進み

静かに爪を立てて彼女を横にした


底面にもしっかりうわぐすりが塗られ

中心には指2本入る穴が開いていた

メゾピアノ 円周部

2番3番の指で優しく

フォルテ 最深部

こすりつけながら激しく


鼻を鳴らす子犬の声で

微振動をはじめたのは

私の指紋のせいだろうか

鼻腔に浸潤する沈丁花の香

漂いはじめたのは彼女が

花瓶だったせいだろうか


台座はLED光に照らされて

二人の行為を月のように青く

映しだしていた


なんというなめらかさ

奥の奥まで変わることない

高まる心を抑えきれずに

蛇のように球体にキスをした


ああ どうしよう


すっぽりと抜け落ちたそれは

無摩擦の平面をツゥーと滑って行き

最果てのところで落下して

割れた


その時天井から吊らされていた

無数の金属の薄い板が

互いに重なり合って

ひとつらなりの音の波になった


自由詩 スフィア フェティッシュ Copyright ハイドパーク 2010-02-08 19:08:51
notebook Home