家出
なき

がらがらの電車の緑のシートに座った途端
私だと思っていた私が
すとん、
と奥に潜ってしまった


私は一体誰だっけ
私は一体何だっけ


体の奥の、ずっと奥
はどこかに繋がるドアの取っ手
私は私に捨てられる


自分を信じるあなたの強い瞳を
思わず見入ってしまったの


睫毛の隙間に隠れてた
私の浮気な心のせいで
私は私に捨てられる


体の奥の、ずっと奥
にまだいるのなら返事をください


私は私に言われたことを
ぼんやりと考えながら頬杖ついて
私の帰りを待ってます


お帰りなさいと言いたくて



自由詩 家出 Copyright なき 2010-02-08 11:17:41
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