水槽の中の泡沫の原子
within
今日もまた音楽を聴きながら朝の身支度をする 九十年代末に流行ったUnderWorldというテクノバンドのBorn Slippy(NUxx)という曲が流れている 「Second Toughest In The Infants」のDisc2に入っている
田舎の青年であったぼくはレイブというものに憧れてはいたが/当時は金もなく(今もないのであるが)とても交通費やチケット代を捻出することはできなかった
そんな満たされない僕は/CDラジカセのボリュームを上げ/ベッドの上で踊り狂い/世紀末のカタルシスと新世紀の予感に/素裸で海の中に入りマスターベーションをするように自分の内部で核融合を起こし/溜まった鬱熱を放散していた
JKが止まらない涎を垂らしながら/散大した瞳孔で世界を眺めている
2k年代に入る前あたりから/高校生の間で流行った援助交際という売春のせいもあり/ドラッグは少年少女たちの間でも身近な存在になった
肉のたるんだ大人たちは/金と麻薬を用い/少年少女を調教することに明け暮れた ぼくはそんな大人たちをモニター越しに見ながら/ひとり踊っていた 回線の向こう側の記録庫に積まれたアカシックレコードをどうにか読みとろうとハッキングの勉強もした
そんなことをしていたことが今も多少は役立っているかもしれないが/精神を病んだ今では/思うようにならない自身を引きずりながら/紙の上に文字を連ねる日々を送っている
踊ることを奪われた毎日 早朝に目覚め/明けてくる町を二階の窓から見ながら/光がこぼれ落ちてくる午後を待っている
時間の蓄積のうわ澄みをすくいながら/ろ過されなかった目の粗い粒子を指の腹で擦り合わせて/言い出せなかった踏み出すための告白を思い出している