One by One
真島正人

一つ一つ、
確実に
記憶はフェードアウトしてゆく
初めから
霧の中にいたのではなくて
どこかで
座礁したのだ
ここは海
ここは船
頭の上に
高い帆が見える
彼らも反省している
海鳥の
きしむ歌声を聴きながら。

ここまで
聖歌にも似た
偽者の声が聞こえる
僕はずっと昔
部屋の床をモップで
綺麗にしてゆくことが好きだったのだ…

そして
夜の星星が
クリームソーダの色になって消えるとき
凍えることはないと
波が震えながらやってくる
床を越えて
モップを越えて
思い出と雷を越えて波は、
軟体動物の資質を
手に入れている

僕は
うわっと
のけぞる

波が優しく微笑みかけると

また
夜空で深い星が
緑色の微笑を返す

すべては
鏡だ


自由詩 One by One Copyright 真島正人 2010-02-07 22:24:14
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