SMOKE
高梁サトル


煙草の煙の向うに霞む景色だけが角膜にやさしく映る
海にも山にも離れた場所で
満たされようと何かを(何でもいい)探している
そしてそれは至極まっとうなことだと言い聞かせて



暖炉に薪をくべて手紙を投げ込んだの
すぐに灰になってしまったわ
期待なんて簡単に燃えて消えるのね



温石の代わりに子猫を抱いて眠る
きつく縋れば死んでしまうような小さな命を
自分の暖をとる為に愛しむ
「私にはこの温もりが必要なの」と涙を流して
よく出来た三文芝居みたい
なんて、滑稽なの



生きる為に何かを愛する
その残酷さに耐えられなくなることがある
清らかさって一体何なのか
時々、分からなくなるの
そういうときの私は
きっと生きている資格がない



熱い紅茶で火傷した舌で
煙草をふかすとピリピリと痛んで
それでも止められない

唇が寂しいと嘆いても
キスは望まない


自由詩 SMOKE Copyright 高梁サトル 2010-02-07 12:35:41
notebook Home