女人の館にて
朧月
庭にある植木をみると
綺麗に刈り取られた枝に
雪が積もっていた
縁側のマッサージ機に座っている
祖父はもういないからと
母がカーテンを閉めた
仏壇の祖父に祖母が
またなにか報告している
大声で話すからけんかみたいと
いやがられたからか祖父は黙ってきいている
祖母は決まって祖父の
好物をひとつだけ供えている
たくさんは食べられないと祖母はいい
たくさん食べなくていいと母は言う
こんな風にいつか祖母も
小さな写真になるのだろうか
そんなこと言ったら祖母はきっと
せいざいして早くというからマダ言えない
祖母と母はときどき
空気中の戦争を始める
そんなとき私は流れ弾に当たり
あえなく捕虜になりさがる
こんな風にいつか私も
冷たい戦争をするだろか
巻き添えをいっぱい作りながら
帝国を築いてゆくのだろう
今夜は女たちのナベパーティ
ナベの音だけがする晩餐
奉行はどっちだか知らないけれど
ぶつかることなく箸はすすむ