素顔
猫道

2009年8月1日、新宿。
人はタマネギの皮みたく剥ける。
とかいって、男は舞台上で着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。

2008年の猫道の中の
2009年の猫道の中の2011年の猫道。
赤土に眠る平将門。
2009年の猫道の中の1998年の猫道。
タイガーマスクのマスクが破られる瞬間。
と聴いて、
各々の頭の中でマスクが破られる。

マスクが破られた先にあるのは
くたびれた中小企業の社長の死に顔かもしれないし、
フルメタルジャケット並の、カッチカチな、
血も涙も無いような腹を決めた人の眼差しかもしれず、
根掘り葉掘り聴くのは怖い。


「女性っていうのは平気で嘘つくからね。
 涙を流しながら嘘つくからね。
 これは私の体験から言えることなんだけども、
 君は寄り添いすぎちゃうところがあるから気をつけたほうがいいと思うよ。」


一皮剥けたら元には戻せないのは、
あの塩釜の海岸で散々日に焼けた20年前のナツヤスミに戻れないのと同じことで、
変わらないのは蚊取り線香の匂いばかりです。


いつまでも同じTシャツばかり着ていられない。
タイガーマスクじゃなくなったら仲良くできない人がいて、
タイガーマスクじゃないほうが好きな人もいて、
それは、ほら、俺思うんだけど、
人間椅子は椅子から出て人と話したほうが愛する人がみつかっていいと思う。
自信のなさから椅子に入ったんだとすれば、
破るべきマスクはその自信のなさにあるんだと思います。

フルメタルジャケット並のカッチカチな、
血も涙も無いような腹を決めた人の眼差しは、
実は、鉛をとったら、か細くて柔らかい。


Tシャツを着替えて、色眼鏡をかけよう。
椅子を捨てて、街へ出よう。
ほら、ペラペラな森喜朗が鈍重な外車に護られて道を行く。
猫はよく聴けばわんわんと鳴く。
変わらない蚊取り線香の匂いや由美かおるはどんどん神様みたいになって、
木や花や山や滝に溶け込んで、マイナスイオンを出し続けている。
世界は今日も、荒れまくってて平和です。


人間椅子になって隠れたりしたい。
タイガーマスクになって悪者をやっつけたりしたい。
途中で我慢できなくなって、タマネギみたく皮を剥いて、
涙目の素顔をさらしたい。
その時、そっちのほうが素敵だって言ってくれる人が一人いたらいい。
みんな涙目になって皮を剥いたらいい。
その時、そっちのほうが素敵だって言ってくれる人が一人いたらいい。
「髪の毛切った?」って言われるのは
みんなうれしいと思うから。


言葉で皮を剥くと、何もしていないのに前に進み、
後ろに戻り、元気になって、落ち込む。

ないものばっかが人を惑わす。
ないものがあるから生きていける。
涙目の素顔をさらして、ないものを創ろう。


自由詩 素顔 Copyright 猫道 2010-02-06 15:42:54
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