「地図の街」
月乃助



目にするものは、すべて
縮小された世界 ほそい指先に
絡まる色糸の道と煩雑なブロック
意識ばかりが拡散して、
すぐに ほんとうの姿が分からなくなってしまう
この街をあんなにも
愛していたはずなのに

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敢然とひろげながら 確かめる
感得しながら いまいちど触れてみる
衝動だったのかしら
街は、あざやかな彩のなか
そこを歩いてみるのです
景色を思い出しては、ただ 街の真正さを
想いはかってみる

家を
買い物する店と、
仕事でいく建物に、
子どもの行く学校は、

そんなことは、小さな頃によくした
空想が夢などでない頃のはなし

言葉にすれば なにもかも
重さなどがなくて、うかれたように
偽りの街と眺めながら
迷いながら、
与えられる自由をこの街で手に入れる

無数の通りの走る影
どこまでも限りあるもの、と つぶやきながら
期待ばかりが彷徨う
ほら、教会のすぐ先に家がある
ここからだったら、夕日だって美しい
信じることもできそうな、
色紙をちぎったような
落陽はここにはのっていないのです

ひとつひとつ
建物の屋根の色と、通り過ぎる車の
おもちゃのような景色にため息をつきながら
もう戻りましょうか
そこに待つ人がいたとしても
この街に暮らすのは、そんなに嫌ですか
冒険をするほどの年かと、笑われてしまう
だめならばピース・サインを出しながら
涙を流しても良いのですね、
joy, joyful, joyous

どれほどの意味があるのか、
飛び出してしまえば、きっとちがった
場所だってあるのだろうに
できないことばかりを言葉にして、
ただ、黙ったまま幸せに
背中を押すその手の力ばかり、日常と
誰もが永遠をくちにし夢を追いかけながら、
歩みだす、地図の街
小さな四角い箱の家たち
彩の紙の悲しみのはしから






自由詩 「地図の街」 Copyright 月乃助 2010-02-06 06:39:20
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