短い虚無の話
散布すべき薬物の所持2

1、
緑色と茶色の紙で出来た折り紙を拾った
なるほどこれは自然の色だ、生い茂る草原だ
どこにでも有り触れている色であって
この折り紙を持っている事はどうしようもなく下らない

僕は折り紙を捨てて、
ふと空を見上げた

なんだこれは、灰いろじゃないか
あるのはビルディングばかりで、全部灰いろ
緑も茶色も何も無い
これでは話は違う

僕は足下を見た
さっき捨てた折り紙を捜して

しかしどこにも折り紙はなく、
灰いろの大地が見えるだけ
灰いろのショーウィンド、
灰いろの少年、
灰いろの薬局、
灰いろのbrutal(暴)、
が、ここにはある

僕はがさがさと這いまわるこの風を受けながら
折り紙を捨てた事を悔いながら死んで行く自分に
何か美しいものを探していた


だが何もない




2、
ポケットに過去を入れていた
208円の過去だ

ポケットに手を入れたまま歩いていて
す、とポケットから手を抜くと
ちゃりんちゃりんと208円が落ちた

208円は落ちると粉になった
白い粉になって吹く風に飛ばされていた
僕はこの理不尽な事柄を正当化しようとした

 どうせ俺はこの金でグラニュー糖を買っていたんだ
 そして買ったら買ったでこの場所で躓き、こぼしていただけだ
 全てが宇宙の名の下に。


僕は208円(の過去)を諦め
次の十字路を右に曲がろうとした
その時、突如としてコンクリートが僕の足を包みこみ
僕はふわりと投げ出されて、躓いた

体を起こそうと思ったが起き上がらない
何故なら、僕も粉になるのだ

躓いた部分から、僕は白い粉になっていく
純白に白い粉になっていく
何かを食べている子供が目の前にいる
汚らしい笑いをその両頬に湛えて、何かを食べているようだ

僕はこの寒い感情の恐怖におびえながら
孤独に子供と闘って死んで行くのだ
病気の腸が世界を包んで
どこかに浮かぶのは僕の虚像
僕は少し悲しい


自由詩 短い虚無の話 Copyright 散布すべき薬物の所持2 2010-02-05 15:42:24
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