目を閉じて、いる
伊織
わたしが
死んでいった日々を
つぎつぎとかぞえる
いくつもの
忘れてきたものは
燃えるごみの日になんの断りもなく捨てられてしまった
脱皮しても
脱皮しても
同じ
(わたくし)
が
手を変え品を変え再生産されるばかりで
何も手に入れることなどできやしない
ああ、今日も
針のむしろの視線ならまだしも
物体としてしか扱われない存在は
羽毛の蒲団をぐるぐるに巻きつけて
左の隅っこに何度もキスをする
かずすくない幸せに
ガンマ補正をかけて
目の前で抱いて見せるのがくるしいのです
あたたかいね
あいしてるよ
むぎゅ だの
もふもふ だの
なでなで だの
食べて
食べて
甘い部分だけを飲み込む
あたたかいよ
あいしてます
このまま眠ることができればハッピーエンド
そんなことは知っている
(もう一錠)
妄想の影もそろそろ薄れてしまい
飛び込む先を
また 見失う