ハード・ブロウ
ホロウ・シカエルボク
懐かしい夢ならそれきり忘れちまいなよ
それはお前をどんな所にも連れていったりはしない
コンビニエンスストアの裏口に放置された
錆びた自転車を見ているうちにそんなアドバイスを耳打ちしたのは
膝に穴のあいたジーンズを穿いたうらぶれた神だった
愚かしい夢ほど捨てられないもんだよ
カウンター・バーで飲んだほんの少しの酒に立ちあがれないほど打ちのめされた時
そんなことを自嘲気味につぶやいて見せたのは四足の小ずるそうな神だった
教えを乞おうとするとビール・ケースの裏側へ消えていった
苦しい夢には気をつけないといつしか内側から蝕まれるよ
そんなことを教えてくれたのは十字架の下で両手を組んだまま骨になった神だった
俺たちは神の子
泥にまみれた明日を喉の奥まで詰め込みながら
楽園に通じる細い道へ続く明かりを血眼で捜し回っている
涼しい顔をしていたってそうさ
怖くて仕方がないのさ
母親のいない寝床でガタガタ震えていた幼いころとほんとはちっとも変っちゃいない
怖いものが見えるものから
見えないものに変わるだけのことさ
騒がしい夢には心を惹かれて仕方がないんだ
それが自分にとってどういう結果になるか判りもしないのに
騒ぎのただなかへ行きたくてたまらなくなる
黙ってじっとしているような時間なんてもうたぶんないんだ
子供のころはそれでよかった
子供のころはそれでもよかった
頭の中だけで進んでいくものがたくさんあったから
大人になったら確かなものがいる
胸を張るのに必ず必要だという何かか
誇らしく生きるために必ず必要だという何かがいる
借物のイデオロギーで満足しない俺みたいな連中には
絶対的に誇らしく生きるために必要だという何かがいる
狂おしい夢が脳裏に焼きついて傷んでも傷んでも離れることがない
その傷みの理由を俺はよく知っている
狂おしい夢が脳裏に焼きついて傷んでも傷んでも離れることがない
俺の魂のために必要な傷み
俺を殺すほどに貫いておくれ、この世にあるすべての神
その先にあるものが欲しい、その先にあるものが知りたい
前口上だけで開く幕のない舞台みたいな
そんないきさつは知りたくもない
幕を開けろ、幕を開けろよ、幕を開けてライトを照らせ
網膜を焼くほどの明かりでなくっちゃ俺は満足しないぜ
すべての人生という存在があぶり出しになるくらい強く当ててくれ
そうすりゃ求められたくらいのことはきちっとこなして見せるから
例えるなら生身で沈んだ墓地の
全身にのしかかる土の圧迫のような夢
それが一番生きていることを感じられる夢だ
だから降り注ぐ太陽が一際明るいのだ
どこまでも叩き落ちる感情、ダウン出来ないハード・ブロウだ
一度ダウンしたら記録されてしまうんだ
俺はダウンするわけにはいかない、どんなに強烈なやつを貰おうとも
立っていたという事実だけが俺の証となるだろう
必ず長期戦だ
必ず長期戦になるぜ
俺に闘いを挑むつもりなら
いつまでも戦い続ける覚悟をしなくちゃいけないぜ
俺にはそんなに選択肢など残されてはいないから
目の前にあるものをとことんまでやってのけるぜ
そこまでやり切れる覚悟があるんなら
脳味噌の中で魚みたいに跳ねてる珠玉のフレーズに手をつけるがいいさ
俺はうんざりするくらい徹底的にやり続けるぜ
だけど眠るときにはあたたかい夢がいいな
愛に満ちた天使に見守られながら眠りにつきたいな
俺はきっと闘いのことを忘れないから一瞬でも楽にしてくれるような愛に満ちた夢がいい
オールニードイズラブだ
オールニードイズラブだよ
愛を叫ぶには本当は勇気がいるんだ
そんな夢の数々を繰り返して
そしていつかはこのうらぶれた身体が
覚めても消えない夢みたいに確かなものとして残ってくれればいい
判るか、聞こえるか、笑ってくれてもかまわない
俺はお前の夢になりたい
俺はお前の夢になりたい
俺はお前の夢になりたい
俺はお前の