名水の谷
朧月

雪が枝からばさりと落ちる頃
山間部のお昼です
除雪車もとまって のどかな風景

年がら年中 年寄りばかりのこの村では
序列通りの決め事と
しわの多さで明日が決まる

子供たちは 真っ赤なほっぺでいるけれど
黙るときが多くなり
やがて背中を向けてゆく

さようならの 雪解け
春の花びらは いくつにも別れ 散ってゆく

繋ぐという言葉も意味をなさぬほど
変わらないということは罪にも似ている
崩れそうな屋根の家の中にも
くすぶってる あの日の家族のいさかい

さらさらと さらさらと 川は流れる
その水に汚れは見当らないけど
だれもいないよ 足を浸す人も
その冷たさは 知られること無く

名水の看板ももがれたままで
しずかに しずかに 滝になる
しずかに しずかに 苔がむす



自由詩 名水の谷 Copyright 朧月 2010-02-02 17:23:32
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