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高杉芹香

その人は穏やかに時間を過す。

あたしの持つそれとは全く違う過し方をする。

今日が何日で、何曜日かも関係ない生き方をしてる。



今日が何日で、何日が勝負日で、とか

何時に会社に着いて何時間は働かなくちゃなんてあたしの日常は

彼には全く関係ない世界。




そんな全く違う時間の過し方をしている2人がいつまでも仲良しなのは

同じ自由を愛する凸と凹ゆえかしら。




平日の深夜、不意に電話してきた彼は

あたしを外に連れ出した。



彼はマンションの下、大きな車であたしを待つ。

乗り込んだらそこには懐かしい匂いがした。



なんという空気を持つ人なんだ。



穏やかだ。本当に。



ご飯を食べて、しばらく車を走らせて。

他愛なく近況を話し合った。



またあたしの自宅まで送って来た彼は

何の違和感もなくあたしにキスをした。

何の違和感もなくあたしを抱いた。

愛おしそうにあたしを抱いた。



慣れた体に安心する。

髪と肌を撫でる彼の優しい指に安心した。




しばらく、あたしは彼以外を愛していて。

その間、彼に会っても抱かれないようにしていたけれど。

彼はあたしから完全に離れていくことはなかった。



愛おしそうにあたしの胸に顔をうずめる彼を見ていると

最後はあたしが彼を守らなくては、と思う。



出会ってから何年も経過した。

どれだけ違う日常を生きようと



どうしようもない彼は

もっとどうしようもないあたしを忘れない。



どうしようもないあたしは

もっとどうしようもない彼に守られている。



最後、自分の周りが変化してしまったとき、

味方がいたと思い出すのはこの人なんだろう。





帰る場所。

それがこの人。




自由詩 HOME Copyright 高杉芹香 2010-01-30 16:31:48
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