こんにゃく
小川 葉

 
 
今すれ違った人
こんにゃくじゃなかった?

休日の散歩道は
いつもそんな母の
一言ではじまる

そう、今の人はこんにゃく
僕と母さんみたいにね

安心した母が
少女みたいに笑ってる

手をにぎってあげると
むかしみたいに
すべすべして
ところどころざらざらしてる
こんにゃくだから

散歩を終えて家に帰ると
草刈りを終えた父が
額を汗で光らせて
少年みたいに笑ってる
こんにゃくだから

今すれちがった人
みたいな顔をして
僕もこんにゃくのふりをする

二人にとって
子供はいくつになっても
子供なのだから

こんにゃくが
こんにゃくだと知ったのは
きっと僕に
父と母がいたから
 
 


自由詩 こんにゃく Copyright 小川 葉 2010-01-30 04:53:54
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