あいしてるって言っても良いの
あぐり



君がいて ほどけるきもちにつくなまえ 留めるホチキスさがしているの



君がいて 境界線を塗りつぶす その為だけの世界地図買う



君がいて きゅうにほしくなってしまう 炭酸みたいにはじけるみずいろ



君がいて 「し」の一文字をいれたくなる 「あいたい」という言葉の真ん中



君がいて 三日先のことぐらい 想像できるようになったよ



君がいて かたまりだったさみしさは あおくふかい海になった



君がいて ちょっとびっくりしていたの 「意外と甘いね、グレープジュース」



君がいて 傷つく人のやさしさを ドロップ缶につめてる一月



君がいて いつのまにか見失った ひとりの部屋の沈黙の場所



君がいて 怖い夢をみたときに 思い出してる7129



君がいて おやすみなさいは言えるんです バイバイだけが言えない、言えない



君がいて そのうちわたしはだめになる 流れる星は燃えて、碧



君がいて うさぎだってさみしさを 食べて生きてるのかもと気付く



君がいて 足のうらまで沁みていく 二月の夕焼け 赤い光



君がいて けんこうこつの曲線は ついばむためにあるのねと言う



君がいて 手の冷たさをはぎとって しまいたいから指を噛んでる



君がいて あんまりにもほしいから そっと睫毛を切りたくなる朝



君がいて 「あ」の一文字を添えたいよ 「いたい」っていう言葉のはじめに



君がいて はらはらと降る声たちに ふくませる水、つめたくないよ



君がいて 赦しあうたび、もうぜったい 泣いたりしないと誓っているのに



君がいて 中指の付け根かたいとこ それをわたしのさみしいくぼみに



君がいて 空にあふれたさみしさが 今日の窓に きらきら きらきら



君がいて 背中にすべらす泡の柔さ 浮かぶ色には今日の愛しさ



君がいて ひとりで舐めてたしあわせを 瓶につめてる桃色キャンディー



君がいて 腕時計の秒針が また今も今も削ぎ落としていく



君がいて 涼しげな名を今日も呼ぶ 月は幽かに春の夜風



君がいて まだわたしたち夏を知らない 海へ行こうよ、ひとつになりたい



君がいて 湿る朝のくちづけは 夢かもしれんね、だからもいちど。



君がいて 寝息をひとりで数えてる さみしいよでも、あったかいんだ



君がいて ステレオタイプのラブソング なんかちょっとはわかる気がした



君がいて 会いたいというそれだけの 感情でわたし、多分生きてる



君がいて 右目瞑ればぜったいに 笑ってしまうよ、くすぐったいから



君がいて 見下ろす瞳の真ん中に ほんのときたま鍵がかかる



君がいて じゃあねおやすみまた明日 切ってよ、そっちが。…も少し話す?



君がいて 「会いたい」「ありがと」「おはよう」「好きです」



君がいて わたし今まで星たちは 尖って光ると信じ込んでた



君がいて 歯の裏側で感じてる 午前一時の歯磨き粉の味



君がいて ふやけた指がやぶけるなら どうかそれを舌で掬って



君がいて くじらが泳ぐ夢の中 遠く汽笛を聞いた気がする



君がいて くしくしと髪、撫でながら 一目惚れと初恋の話



君がいて のどの奥の空洞は 海からの風でいっぱいになる



君がいて あんなにも近くにいた日々が いつかわたしを死なすんだろうか



君がいて 身体がはなれた瞬間を 遠距離恋愛と呼びたくなるの



君がいて 「大丈夫」ってほんとうに さみしい言葉と気付く真夜中



君がいて ただしいことはさみしいと 教えてあげたいわたしの正論



君がいて あいしてる。がこんなにも 切なくかたい言葉としった



君がいて おなかにしみてくしあわせは 「み」と「い」と「る」のやらかさ、まるみ



君がいて わたしの横に君がいて きっと明日も君はいて









短歌 あいしてるって言っても良いの Copyright あぐり 2010-01-28 13:07:16
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