銀色の月を砕いた細雪
虚飾の街にも、しんしんと
上野発カシオペアはふるさとゆき
すれちがう旅人のなつかしいアクセント
耳の奥では遠い遠い子守唄
かあさんの声、過去をめくる。
(父さんはどこ?)あの日、わたしは母に問うた。
かあさんはわたしを抱きしめ泣きじゃくる。
夜行列車のくもりガラス
幼い指で描いた母の笑顔は悲しかった。
窓には氷の花が咲き、かあさんを かあさんを 枯らす。
北風を流れる冬はごうごうと、母の色をうばっていった。
「それでも春はくるの。」 灰色のかあさんは震える声で菜の花の子守歌をうたう。
「ことしも春はくるね。」 灰色の二月の街でわたしはきいろのひかりを恋い慕う。