愛人の彼氏
吉岡ペペロ

愛人の彼氏は中国人だ
愛人は韓国人で俺は日本人だった

三人をふくむ友人たちと
餃子パーティーをしたことがある
広島の別荘で真夏のことだった

中国人たちが餃子をつくっているあいだ
日本人や韓国人がスイカやドリンクを冷やした

網にいれたスイカを清流にひたして
そこで小一時間ほど過ごした

あたしとはじめて会ったときのこと覚えてますか?

清流のひかりや影の紋を見つめながら

覚えてへん、

愛人とふたりきりで話すのははじめてだった

いや、覚えてる、覚えてる、

適当なことを言って愛人をのぞきこんだ

あたしは覚えてる、

なら、それでええやん、ああ、なんか腹減ったなあ、

網からスイカひとつを取り出して石で割った

どんぐらい冷えたんやろ、ま、落としたとか言うたらええやん、

愛人にスイカのカケラを渡してふたりで食べた
思いのほかよく冷えたスイカで
愛人のTシャツには薄い血のような染みができていた

別荘にもどると
水餃子の香りに食欲をそそられた
目や耳が愛人を探すようになっていた
愛人の彼氏が不機嫌なようにみえた


自由詩 愛人の彼氏 Copyright 吉岡ペペロ 2010-01-26 22:34:02
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