愛人の彼氏
吉岡ペペロ
愛人の彼氏は中国人だ
愛人は韓国人で俺は日本人だった
三人をふくむ友人たちと
餃子パーティーをしたことがある
広島の別荘で真夏のことだった
中国人たちが餃子をつくっているあいだ
日本人や韓国人がスイカやドリンクを冷やした
網にいれたスイカを清流にひたして
そこで小一時間ほど過ごした
あたしとはじめて会ったときのこと覚えてますか?
清流のひかりや影の紋を見つめながら
覚えてへん、
愛人とふたりきりで話すのははじめてだった
いや、覚えてる、覚えてる、
適当なことを言って愛人をのぞきこんだ
あたしは覚えてる、
なら、それでええやん、ああ、なんか腹減ったなあ、
網からスイカひとつを取り出して石で割った
どんぐらい冷えたんやろ、ま、落としたとか言うたらええやん、
愛人にスイカのカケラを渡してふたりで食べた
思いのほかよく冷えたスイカで
愛人のTシャツには薄い血のような染みができていた
別荘にもどると
水餃子の香りに食欲をそそられた
目や耳が愛人を探すようになっていた
愛人の彼氏が不機嫌なようにみえた