忘れ形見
朧月

白いあなたはたちのぼりました
火葬場の空に

時間はどこででも流れるものだと
感じた棺の残骸
自分の嗚咽に一番 自分が驚きました

私はあなたを憎んでいたし
あなたと対決する日がこわかった
だから無言でいたし だから目線そらしていたし
そんな日は永遠であるように思えた

いがみ合っていたのではありません
ただ受け入れられないところがあった
祖父の生きてきた常識の中に
私の選ぶ道がなかっただけ

えとで生き様がわかると言い
生まれ順で位があると言い
性別で順位が決まると言い
通らないと大声で怒鳴った

めんどくさくて うるさくて どうでもよくて
どうでもよくなくて 言い争ってきた
黙する母と 怯える姉の
たてになりたかったわけじゃないけど

白くのぼってゆくあなたを見てるのは
きっと私だけじゃない
それでも いまだに 空をみては
白い雲を追いかけている
唯一あなたにほめられた背筋を伸ばしながら



自由詩 忘れ形見 Copyright 朧月 2010-01-26 19:02:47
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