そら
umineko

子供らがそらを指さして騒いでる
何事かと思いぼくもそらを見る
この角度でそらを眺めるのは
ずいぶんと久しぶりだ
見慣れたビルの屋上付近は
見慣れない広告でひしめいている
そのすき間ほどのまぶしい青に
目を細めてじっと見やる
      
子供らがあれはなんだと騒いでる
ぼくからは何も見えない
微妙な角度の問題かもしれないし
少々酷使した視力のせいかもしれない
ほんの何秒かでぼくはあきらめて
他愛ないスケジュールを口の中で反復する
      
それは誰かの手を放たれた
しあわせな風船だったかもしれない
あるいは遠く故郷を離れて
とまどう鳥の影かもしれない
それを同定することと
午後のスケジュールとは何の関係もなく
ただぼくは耳の奥で遠い声を聞いている
それはおまえには見えないのだ
それはおまえには見えないようにできているのだ と
      
だが
そんな声などお構いなしに
ぼくはもう二度と見上げることはない
せわしなく動く人の群れは
誰もが信号を気にしている
どんな交差点にも信号はあり
そらを見上げることは何ももたらさないからだ
それはどこか愛に似ている
もう二度と見上げることはないのだから
  
  


自由詩 そら Copyright umineko 2004-09-25 16:39:13
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