冬の声
月乃助



光沢をみせる
明かりが窓からもれ出ています
街辻に面した旧い教会は、十字をかかげ
黒い街灯は、とがったその四角い頭をおもたそうに
旧さの中に時を埋めてしまう
子どもがくれた葉書
知らぬ間にいつか
ポケットに残ってしまって
冬の街の夜景は、黄金色の雪のなかで
静かさばかりが、こな雪の音を立てている
重そうな屋根のひさしからは、
冬の寒さがさらさらと落ちて、
四角く切り取られたそこに
わが子が立っていた
あたしはそれを手にして
糸口を探してみる だから
その街にたたずみコートの襟をあわせたり
窓辺のつららのとがった先を眺めたり
明かりが影をつくる通りの
滑りやすい足元を見ながら歩き始めるのです
四桁の番地の番号を確かめながら
どこというあてはないのに、四角い写真のそとには出ないように
そこにいれば、不思議と安らかにいられる
子どもが好きな街、ただそれだけで
映っているその建物の後ろ側には、裏面しかないのだから
見られるところを、ぐるぐると
そのなかで、立ち尽くしたり
ありもしない夜空を見上げたり
窓からもれる灯りを確かめたり それでも、
教会にも、どの店にも入ることはできず
いつかそんなことをしていたら
声がしてきそうで、
Mom
それを聞こうとしながら
子どものくれた 冬景色の
街にいつまでもあたしは、
たっていました







自由詩 冬の声 Copyright 月乃助 2010-01-26 06:31:23
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