今日もきみにたべられたい
あぐり
もうこの海から月は見えずに
溶けきってるわたしのりんかくは掴めずに
今日の、その感覚が
痛いって 知ったの、知ったの
痛いって。
(たべたい)
中指、声がつまる朝には中指
きみにあげるよわたしのなかゆび
もう欠けてるわたしをはなせないなら
わたしはゆびなんかなくてもいいんです
窓際で赤い花を咲かせてるサボテンの
小さなトゲに触れてる夜は
昨日の、その言葉の色が
痛さって 気付くの、気付くの
きみのまじりけない痛みって。
まじりけない痛みって。
(たべてよ)
右耳、こんな部屋が広すぎる夜には右耳
きみにあげるよわたしのみぎみみ
ゆがんだかたちしかあいせないなら
わたしのぜんぶ、かみちぎって
(カマキリみたいにわたしは
きみを食べるためのかなしみがないの
でも、わたしの手の中できみが海になっちゃえば
ごくん と
飲み込んじゃうよ、ぜんぶわたしになる
わたしになったきみがまんなかにしみてく
ほら、じんじんと、
じんじんと)
この肌も骨も邪魔だね
みんな邪魔だね
これがきみなんだろうかこれがないときみじゃないんだろうか
あふれてしまうから枠があって
それがきみのほんとのかたちなんだろうか
抱き締めてもだきしめても溶けないのは
わたしの手が冷たいからなの
ねぇ
左目が熱で濡れてる
きみの瞳はもう溶けてる
(そののどにかみついたら きみのこえがくちにあふれた)
たべられたい
たべられたい
きみのなかならわたしはもうかたちがない
かみくだかれてなくなるのは
くだらないわたしの淋しがる背骨
きみにかまれた痛みはずっと
じんじんとわたしにきょうだって
ひとりでいきてることを感じさせてる