牛乳特選帯(仮)
手乗川文鳥



台風の季節は
内川の水かさが増えて
びゅんびゅん橋が流されていく
毎年流されていく

助手席に深く座って
国道11号線のヘッドライトを目で追う
期待や倦怠で満ちた車内を
MJQのヴィヴラホンが笑う

五十鈴神社 五色浜 夜光虫 桜三里 ホテル伊台城 
奥道後よりもっと奥へ字の如く迷走
大学生のモラトリアム以前の幼稚な抑鬱
訪れた場所全て鬼門になる思い出
この指があんなに太い弦を弾いていたなんて今じゃもう信じられない
大学生は一種の病気だ
ずっと発熱していたから

大阪へ進学したカナちゃんは彼氏と大人のオモチャを買って遊んだことやお尻の穴についての話を手紙で書いてよこしてきた
なんて返事すればいいのか本気で分からなかったがとりあえず「ほどほどにね」と書いておいた

高校と大学の友人たちは
就職活動の頃から殆どが音信不通で
私とモラトリアムを繋ぎ止める関係は
もう機能していない
40代になってお互い結婚していなかったら結婚しよう
とか
妹みたい なんでも話せる
とか
俺も彼女と結婚するつもりだし 責任感がないなんて言われる筋合いない
とか
思い出してウンザリするようなセリフをアンタらも時々思い出して自己嫌悪してください
バイバイ松山
帰る場所なんてどこにでも出来る
今の私が帰るのは東京都練馬区
メゾネットハウスの2階、せまい和室、湿った布団の、君と猫の隣

流れていったびゅんびゅん橋
諦めた町内会
新しく川にかかる橋はコンクリート製で
もう流されることはなくなった



どこまでだって行けるし
ずっとここにいることだって
できる
答えは好きか嫌いかだけじゃない
そんなものずっとわからない
それが答え
関西弁が混ざって余計イントネーションがおかしいけど
これが私の標準語



どこまでだって行けるよ
だけど
まだここにおるよ





自由詩 牛乳特選帯(仮) Copyright 手乗川文鳥 2010-01-25 11:39:01
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