九月病 
本木はじめ


朽ち果てた夜行列車の寝台に
寝転んで星空を見ている
至るところが錆びていて
天井屋根はぬけたまま
よじ登る君はそのまま戻らない
仲間たちもどらない

まるで夜だ

屋根裏部屋で見つけた
線香花火と麦藁帽子だ
土中に埋まった巨大な土管だ
浜辺に座礁したままの廃船
殺された鈴虫のような
鳴らない黒電話だ

九月

しをらしい朝顔が庭先に

お前の明日はどこだい

耳が無いなら
わたしの耳をあげようね
ゴッホに描かれた着物のように
みじめな秋


「遠いどこか」は「あこがれ」と
おんなしだと思ってみたり


こんなにも快適な世界になったのに
僕は未だに
あの山ひとつ越えられぬまま

朽ち果てた夜行列車のなかで
またしても
線路じみた朝を迎える






自由詩 九月病  Copyright 本木はじめ 2004-09-25 11:02:31
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