私は裸足で アロエを買いに往く
鈴木陽一レモン

アロエを
買いにいくの
わたしは、はだしで。

はだしのあしが、こたつから
(ぬっ)と、でる。
はだしのあしが、まだ
ぬくもりを内包しながら
みえない湯気を立ち昇らせながら
いっそう冷たい外気に抗う気概存分の面持ちにて
のし、のし、交互に右と左が前にでる。

 よもや地球を蹴りながら
 回る優雅なムーンヲークよろしく
 後退しているやも。と、想いも馳せずに
 部屋のそとへと、一目散
  「生き地獄さ!
       こんな暮らし、
           飽き飽きさ!」

真光が、鎮座ましまして
照らし出した鷲達、火事手伝い
放火魔と化し、互いを庇い合い
モカ、塩、菓子を貸し借り
はだし の あし
まっす ぐぅに 廊下を滑る。

はだしのあしは、玄関に降り立つ。
はだしの前足が、紫色でドアノブ引っ掴んで
(ぐっ)と、ちからを入れ

 おんなのこは、かわいかった
 宗教に嵌まってしまうような
 かわいさだった。

はだしは、はだかのまま笑ったし
はだしは、はだかのまま怒ったし
とびらが、ひらくと銀世界なった
(わっ)と、さむかった。


 あしが、おなじように
 くりかえしを、した。
 おんなしように、した、あしが。

あ た し の あ し が !!

ちぎれそうだった
けど、ちぎれなかった。 おーらい(ぴーす)。

 後退しないムーンヲークで我々は侵略する。
 おろかな、この星の住人どもを
 ひとりのこらず、なでまわしてやる!!
 「いいこ、いいこ」してやるんだわ!!
 わははー。

おおきな独り言を云いながらも
つづく。あしは、はだしを、つづける。
あしあとを、つづける。銀に。つける。
刻み、往く、わたしたちは、ただ一人きりの
アロエを求める旅人で、あり続ける。

 たむける べき あてもないのに
 まだ だれも 愛したことがないのに

 獲得したいのは、
 はるでもなければ
、靴下でもなければ
、なにでもない。

はだしのあしが、バス停で待つ
来るはずのない、終発を、待つ
はだしのあしは、はだかで
はだしの前足も、かんぜんに手ぶらだ
なにももってないはだしは
なにものれないし
なにもかえない

でも、かえらない


 こたつの部屋に
 ひとり取り残された
 なまえのないひきこもりの
、おとこのこは
、としをとりながら
、つぶやいった (ついったー)

さんきゅー、はるや。
だいじょうぶ。
どこへも、行ったりしない。
拙い獣から、ずっとはなれて
わたしたちは、産まれた病院から
一歩も外へ出ようとはしない。
だから
わたしたちは、永久に
出会うことも、別れることもないまま
ただ、間違えるの。

Hello も云えずに、凍えるの。  0。


自由詩 私は裸足で アロエを買いに往く Copyright 鈴木陽一レモン 2010-01-22 18:41:39
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