おとうさんへ
朧月

おとうさん
そう呼ばせてください
あなたをおとうさんと呼んだ記憶がないのです

おとうさん
こっちをむいてください
あなたと視線をあわせて話したことがないのです

おとうさんの娘としてこどもとして
私をちゃんと認めてください
私はあなたからうまれました

おとうさんはこどもで
おとうさんはおっとで
おとうさんはおとこでした
でも 
おとうさんはおとうさんであったことは
一度もなかったようにおもうのです

そんなことはない
そう言ってください こっちをむいて

あなたが振り向かず
私を見ないで帰ってしまった家庭裁判所の庭に
私のすきな花があったことを
忘れられずに今も


おとうさんの生涯の中で
私という娘があったことを
思い出してくれる日を
ずっとずっと待っています

そしてそんな日がきたら
娘としておとうさんを殴ってやろう
そう決めているのです



自由詩 おとうさんへ Copyright 朧月 2010-01-22 08:59:29
notebook Home 戻る